私の心中にはいつもホセ・オルテガの「真の自由主義が歴史主義であることを発見したのはイギリス人である」の一言が深く刻み込まれている。「歴史の流れ」をどう受け止めるか、その流れによって運ばれてきた「慣習の体系」のうちどれを受け入れどれを排除するか、慣習の奥底に内蔵されているはずの「危機における平衡感覚」としての「伝統の精神」を今此処の状況においていかに活かすか、それが自由論の骨子だとオルテガはいっているのである。……保守思想と自由思想は表裏一体でなければならない。そのことを軽んじたのが「歴史なき国」アメリカであり、そのアメリカに屈従した戦後日本である。(「再刊への序」より)
100年に1度という世界的ウイルス惨禍を、果してどのように耐えぬくことだろう。あるべき自由を死生の間(あわい)に追い求めたこの人が、もしも生きていたなら……。