2014.12.05

錫杖岳「la campanella」の開拓

今井健司

 

(4ピッチ目を登る今井 / 5.13b)

「うっひゃ~!!」

次の一手を止め切れず、僕はまたしても大空に投げ出された。一体何度この恐怖と浮遊感を味わったのだろう。ここの高度感にも慣れてはきたが、ロープにぶら下がって足元を見れば地面は遥か120ⅿ下にある。・・・うーん、やっぱりちょっと怖い。でも、今のトライはちょっと惜しかった。次はもう少しいい所まで行けそうだ。

 

(錫杖岳前衛壁 中央の白い部分が白壁。)

 

(4ピッチ目をユマールする。)

壁にぶら下がってビレイしているパートナーにアドバイスをもらい、落ちたセクションから再トライする。このやり取りもいつもの事。頼もしいパートナーのお陰で僕は安心してトライができるのだ。

 

(頼もしきパートナー 増本亮)

僕らがこの錫杖岳前衛壁「白壁カンテ」にフリーのルートを開拓し始めたのは2012年。もう3シーズン目になる。解決できないでいるのは4ピッチ目で、1ピッチ目5.10a  / 55m、2ピッチ目5.9 / 30m、3ピッチ目5.11c/R / 30mと登ってきた次のピッチだ。そして最後の5ピッチ目は5.11b / 30m。つまりこの4ピッチ目を登ればルートは完成となる。

 

(5ピッチ目を登る今井 / 5.11b)

しかし、事はそう簡単に行かない。このピッチは本当に難しく二人ともなかなか登ることが出来なかった。この30ⅿを登るために僕らは何度も何度もこの壁に足を運ぶことになった。効率よく4ピッチ目をトライするために下部100ⅿはロープをFIXして毎回ユマールした。それと言うのも3ピッチ目5.11cはプロテクションが悪く、うっかり落ちようものなら骨折では済まないからだ。しかも、そんな苦労をしてまで登ってきても1日にトライできるのはせいぜい1~3回。それ以上はフィジカル的に無理だった。

 

(ユマールして4ピッチ目に向かう)

しかし、最初は絶望的に感じていたムーヴも何度も繰り返すうちに自然と出来るようになった。特に増本はかなり精度を上げてきている。もうRPは目前だ。

 

(4ピッチ目を登る増本 / 5.13b)

この壁で過ごす楽しい時間もあと少しで終わってしまう。そう思うと嬉しいような寂しいような、ちょっと複雑な気分だ。しかし、とにかく今は、早く登ってしまいたい。

そう、完登は目前なのだ。

 

(穂高をバックに・・・)

このレポート「錫杖岳la campanellaの開拓」の詳細は、山と渓谷社Rock&Snow No.66(12/6発売)に掲載予定です。

レポーター紹介
今井健司
今井健司

アルパインクライマー
穂高岳・八ヶ岳での山小屋生活中にクライミングを始める。錫杖岳「深夜特急 / 5.11d」、御在所岳の冬季ミックスルート開拓者。瑞牆まで40 分の立地を甘受し、本人いわく「最高の毎日」を送っている。
1982 年生まれ、1 児のパパ。