2014.12.19

グランレイド・デ・レユニオン

山本 健一 

Grand Raid de Reunion 173k レポート

La diagonale des fous 。意味は「対角線に走る愚か者」私が走ったカテゴリーの名前です。島を南から北に必死で走ってきました愚か者、山本健一です。2014年10月23日~25日にフランス領のレユニオン島で開催された、ウルトラトレイルワールドツアー最終戦、グランレイド・レユニオンについて報告します。レユニオン遠征に際しまして、多くの皆様の援助・応援のおかげで最高の遠征ができましたことに、感謝の意を表します。ありがとうございました。

 レースレポート

 昨年に引き続き4月下旬、ウルトラトレイルマウント富士(UTMF)において、リタイアをしました。しかしこの大会で確かな手応えを私はつかんでいました。それは膝のこと。昨年は一年間膝痛に悩み、結局本番レースでも40kmで痛みが出てしまうという始末。昨年のアンドラ以降、走り方の改善に取り組みました。その成果をUTMFで感じることができ、リタイアした151kmまでまったく膝の痛みなく走れたのでした。今年は行ける、そう感じたのでした。

 今年のメインレースに選んだのは、グランレイド・デ・レユニオン。夏場はほとんど大会には参加しませんでした。理由は、特にありません(汗)。タイミングが合わなかったからです。その代わりに、自分で都合のいいときに、長い時間を走るトレーニングをしました。8月に北アルプスで14時間、9月に南アルプスで12時間、7時間、10月にも6時間。どの練習でも最後に標高差1500m以上の下りを用意して、そこを全力で駆け下りるということを意識し、どの回も満足した練習ができました。最後の練習だけ若干膝に疲労が出た感じはありましたが・・・トレーニングのバランスはムズカシイです。3000mでのトレーニングだったので今年は低酸素ルーム行きませんでした。

 さて、レユニオンスタートライン。今回のテーマは「野生になる」です。何も考えずに走り、自然と一体になることです。リラックスし楽しみを体全体で表現することです。スタート地点のサンピエールは地元の方の熱気ですごい迫力でした。あんなの味わったことないです。22:30、一斉に2300人のランナーが飛びだしました。私は何とか先頭に位置取りをしていたため、安全にスタートすることができました。中途半端に真ん中にいると転んだら最後です。起き上がれません。沿道には、延々と地元住民が旗を振り、5kmくらいまではかなり賑やかでした。テンション上がりますね。海抜ゼロからのスタートでしたので、どんどんと高度を上げていきます。サトウキビ畑の中や、牧場を通り抜けて高度1500m、24km一つ目のアシスタントポイントに到着。サポートの皆は静かでした。私も穏やかに、また走り出し、次のポイントのマ-レを目指しました。この頃、先ほどまで見えていた美しい星達は姿を消し、なんと大嵐が私たちを迎えるのでした。しかし、私は、雨が好きです。嵐が好きです。なんかかっこよくないですか。夜中に嵐の中をランプ一つで走るなんて。テンションアップします。走りも良くなってきて、野生の自分を感じながら走っていたことでしょう。しかしここで問題発生。予想タイムより1時間半近く早く走ってきていたので、サポート隊が間に合わずに、補給を受け取ることができませんでした。しかし、予備のエネルギーを1500kcalほど持っていたので、特に焦ることなくシラオを目指しました。夜が明け始め、ここから私がこのコースで一番の楽しみにしていた、島最高峰のピトン・デ・ネージュを囲む火山の圏谷ランです。このコースは3つの圏谷を走ります。世界自然遺産になっている圏谷です。その一つ目、シラオ圏谷。外輪山からの下りは激しく、標高差1100mを調子よくノリノリで駆け下りました。まったく疲労感ないままシラオへ。66km。サポートのない選手はドロップバッグです。毎回思いますが、サポートは本当にありがたい。補給だけでなく、次にまた4時間以内で会えるという安心感。ないと完走できません。ここからさらに激しいのでしっかりサポートの皆と会話をし、充電してエイドを後にしました。応援の力は本当にすごいです。

 シラオを出ると、次はまた標高差1200mの登りです。ここでトラブル。なんと睡魔が・・・・。朝7時くらいでした。かなり眠くて、フラフラでした。しかし足を止めることなく登りました。よろけながら進むと2400mの稜線が濃霧と共に僕を迎えてくれました。眠気も去り、次はコース変更になったHell bourg(1000m)に一気に下ります。ここは二つ目の火口、サラジー圏谷です。雨だったのでとてもスリッピーで楽しかったです。

レユニオン島は決まった道路しかないため混雑します。そのため、サポートチームが2班必要になります。ここHell bourgではその1班にサポートしてもらい、そこからさらに680mの野原まで下ります。そしてまた急斜面を2000mのコルまで上がります。まったくとんでもなく激しいコースです。でも登りでは速度がゆっくりなのか眠くなってしまうのです。何度がコース脇に横たわり、20秒ほど数えてまた起き上がり、進むと行ったことを繰り返しました。しかしところどころに大きな滝が見え、そこでは大きな感動を得ることができました。

 そしてコルを過ぎると3つめの火口、マファテ圏谷です。とにかく規模がでかすぎてびっくりです。すごくかっこいい場所でした。谷底(1110m)まで一度下り、そこからまた2030mの外輪山のマイドを目指すわけですが、これがまたすごい行程でした。本当にすごいの一言に尽きます。とても贅沢な時間であり、幸せを感じながら走っていました。しかし、マイドへの登りは超絶壁。その麓のエイドで地元の方からパンケーキをもらい(有料だったが近くにいたおじさんが買ってくれた)、食べてみるもパサパサすぎて食べれず。仕方なくザックにしまい、急登を進みました。そしてここでも睡魔が襲来しました。おかしいです。こんなに眠くなったことはない。幻覚も見え始めている。なんかやばい。そんな気持ちになりながらもサポートの待つマイドを目指しました。フラフラで121km地点マイドに到着。これで火口は終わりでした。何度も言いますが、すごいところを走らせてもらった、というのが感想です。

 しかしそんな状況でもここまで計算していた予定時刻より1時間半くらい速いペースできていたので、ゴールも26時間くらいかと読んでいました。マイドを過ぎると目が覚め、2回目の夜になりましたが、快調に下ります。ここでは230mのアルテラ(ドロップバッグ)まで一気に下ります。木段を、これでもか!というくらい下ります。ここまで139km。残り、34km。あとは標高差も2000m弱くらいなので走れるコースで終わりかと思っていました。アルテラをサポートクルーに見送られて出発すると、いきなりサトウキビ畑を永遠と登りました。またまた睡魔に襲われ、訳わからなくなりかけて登りました。幻覚たくさんでした。全てが恐竜や、沿道の応援者、カメラマンの藤巻翔くんに見えました。このレース、非常にコースマーキングが少ないんです。そのサトウキビ畑は20分以上何もないというところもありました。何度も引き返そうとしましたが、ぼーっとかなり進んでしまっていましたので戻る勇気はありませんでした。サトウキビ畑の頂上で誘導の係員がいたときはとってもうれしかったです。でもその後、集落に下りてもマークがなくて、何度も引き返したりしました。でも結局合っているわけです。度胸試しのようなコースが残りの34kmには用意されていました。これまでとは全く違うテクニカルなコースも。次のポゼシオンというエイドでは自分ではわからなかったですが、サポートの仲間は“顔が死んでいた”と言ってました。かなり神経使ったのだと思います。次の区間は6.8kmと短いので、簡単に次に進めると思っていました。しかしここでは、今度は石畳縛りでした。最初から最後までずっと石畳。しかもでこぼこ。雨が降っていなくて良かった。ここでも睡魔が。周りの選手もいよいよ疲労が出ていて、寝ている選手も。私も相変わらずの幻覚だらけで、さすがにやばいと思い、石畳のベッドにごろり。10分くらい寝ました。レースでこんなに眠ったのは初めてです。頭が冴え、また集中したいい走りができたと思います。

 いよいよ最終サポート地点。159km。海沿いの町グランドシャロウペ。このとき顔が生き返っていた、と越中トレーナー。ここでも死んでいたら、レースを中止させていたとあとの話で聞きました。幻覚は行き過ぎると危険です。崖から転落したり、その危険性もあるとのことでした。最後サンドニまで「全力を出し切る」そう決意し、出発しました。しかし、ここでも道迷い。今度は入り口が見当たりません。20分彷徨い、結局近くの住民に聞いて、なんとかオンコース。しかし3~4kmほどコースマークありませんでした。怖いです。雨も降りだし、またびしょ濡れです。しかし、集中していたせいか、道迷いも、雨も何も気になりませんでした。コロラドのエイドを過ぎ、あとはサンドニのスタジアムまでの4kmの下りです。チキショーと言いながら下っていたような記憶があります。睡魔にやられるなんて今までなかったので、それも悔しかったし、もっとマークを信じて進むべきだったし、フランス語も勉強するべきだったし、レユニオンのレースについて勉強不足だった自分に腹が立ちました。いろんな思いがグルグル回り、結局無心で駆け下りていたんだと思います。とてもテクニカルな下りを最後に用意していただき、本当に最後の最後までやりがいのあるコースでした。楽しかったです。走りも最後まで自分の練習してきたものを出せたと思います。スタジアムではいつもならスピードを落としてゆっくりと楽しみながらゴールしますが、今回は速度を落とさず、体が勝手にそのままゴールゲートを通り抜けていました。

29時間4分の旅は終わりました。いろんな気持ちがこみ上げてきてサポートクルーのボスに抱きついたら涙が溢れてきました。完走できたことはもちろん素直にうれしいですが、それだけではなかったなぁと今回のレースを振り返ると感じます。でもいい経験をしました。まだまだ僕には可能性があるということも実感しましたし、久々に悔しさを感じることができました。このような経験をさせていただいたことに今はただただ感謝するだけです。ありがとうございました。

レユニオンはいつかまた挑戦したいです。すごくいいところです。これからも応援よろしくお願いいたします。

山本健一

使用パック(2015年発売予定です)

Ultra spire ZYGOS・・・来期モデル大きくモデルチェンジするこのZYGOSはかなりの優れものです。一番大きく変わったのは、ハイドレーションでもフロントにボトルでもどちらでも対応できるということです。今回はフロント両側に500mlのボトルを装着しました。揺れも気にならず、補給も素早く、ストレスフリーなエイドになりました。装備はレインウエア上、ヘッドランプ2個、フリース、テーピング2本、サバイバルブランケット、水、食料、コンタクトレンズ、ホイッスル、家族の写真を入れました。まだまだ余裕で入ります。すかすかのときはストラップで締めれば、小さくなります。

レポーター紹介
山本 健一 
山本 健一 

トレイルランナー

2008 年ハセツネ新記録での優勝で注目を浴び、2012 年UTMF にて日本人トップとなる3 位、フランス ピレネー100 マイルにて日本人初優勝と名実ともに日本を代表するトップトレイルランナー