マンモスの帰還と蘇る絶滅動物たち
人類は絶滅した動物たちを,蘇らせることができるのか?
マンモスをはじめとする絶滅種の遺伝子操作による再生は人間と自然との関係について深い疑問を投げかける。環境を破壊し、多様な動物や植物を絶滅に追いやってきた人間は、いま、その再生と種の創出に踏み出そうとしている。それは単に種の問題にとどまらず、ツンドラの崩壊をはじめ大きな環境問題にも通じる。人類はどこまで地球の自然と生き物の運命に手を染めてよいのか。最先端の科学者たちによる研究の実態を追い、私たちに重要な問いを提起する科学ノンフィクション。
JT生命誌研究館名誉館長 中村桂子
さまざまな絶滅種を地球上に呼び戻し、ツンドラをマンモスが走り回る日が来るのか?マンモスからリョコウバトまでさまざまな絶滅種再生の現場を訪ね、研究者の魅力と危うさとを具体的に伝える好著。「生物多様性を壊してきた人間は、それを増やす初めての種にもなれる(byオリバー・ライダー 遺伝学)」という研究者の言葉は魅力的だが、私たちを落ち着かなくもさせる。これからの人間と自然との関わり方を考えさせてくれる。
著者紹介
Torill Kornfeldtトーリル・コーンフェルト生物学をバックグラウンドに持つスウェーデンの科学ジャーナリスト。バイオテクノロジーの急速な発展が、私たちの世界にどのような変化をもたらすかということに、強い関心を抱いている。この本が、彼女のデビュー作。
監修
中村桂子 なかむら けいこJT生命誌研究館名誉館長。東京大学理学部化学科卒業。東京大学大学院生物化学専攻博士課程修了(理学博士)。三菱化成生命科学研究所人間自然研究部長、早稲田大学人間科学部教授、東京大学先端科学センター客員教授、大阪大学連携大学院教授などを歴任後、生きることを考え、表現する場である「生命誌研究館」を1993年に創立。副館長、館長を務め、2020年4月より現職。著書に『科学者が人間であること』(岩波新書)、『中村桂子コレクション(全八巻) あそぶ 12歳の生命誌他』(藤原書店)、『小さき生きものたちの国で』(青土社)、『生命誌とは何か』(講談社学術文庫)などがある。
翻訳
中村友子 なかむら ともこスウェーデン語講師及び翻訳者。ストックホルム大学文学科留学。訳書に『終止符(ピリオド)』(講談社文庫)、共訳に『ゲノムを支配するものは誰か』(日本経済新聞出版)、『お母さん、ノーベル賞をもらう』(工作舎)、『DNAとの対話』(早川書房)などがある。