マウンテンガールズ・フォーエバー
オンナの登山道は一本道ではない。 山系コミックエッセイでおなじみ鈴木みき、まさかの小説デビュー!
あの日見た景色は、いつだって胸のなかに。 絡み合い、すれ違う、5人の女たちの物語。 【内容】 岩壁の向こう側―翼と引き換えにささやかな安定を得た宇井優香。ふとした会話が濁らせていた山の気配を呼び起こし、4年ぶりの登山を決意する。 クライミングジム・シンデレラ―夫とは何もかも合わないが、それ以外は恵まれている。専業主婦の二階敏子は、今のルートが修復できないものだと気づき、かぼちゃ色のアウディを走らせる。 幻の縦走計画―普通すぎる自分にコンプレックスを抱える見方めぐみ。公私ともにやりがいを見出し、自らの力で道を切り拓こうと歩みはじめたそのとき、自身の体の変化を感じ取る。 ザイル・パートナー―「恋以外には図々しい年頃」と自分を諭す志村千穂。クライミングに情熱を燃やす亨に思いを寄せるなか、後輩から予期せぬプロポーズを受ける。 母がいた八ヶ岳―物心つく前に母を亡くした後藤六実。二十歳を前に、未来に向けて薄情になる覚悟を決めた六実は、遺されたウェアを身に付け、母の命を奪った山へ向かう。 【目次】 岩壁の向こう側 1 優雅なモーニングルーティンなんてあるものか 2 みんながいないところへ 3 「生きている」は、この岩壁のどこにあるのだろう 4 山には〝それ〟があるはずなのに 5 それだけ残しておけば十分だ クライミングジム・シンデレラ 1 シンデレラタイムはかぼちゃ色のアウディで 2 こんな夜を過ごしている私を知っているのはラジオしかいない 3 地面に蝉の抜け殻が落ちた 4 夫と何もかも合わない以外は大変恵まれている 5 隣のバラもいいが、うちのコスモスだってなかなかだ 幻の縦走計画 1 お煎餅とお餅の子 2 その結果は、あまりにもあっけなく示された 3 ヒールのパンプスとマタニティマーク 4 それを山で感じることはなかった 5 あなたといればどこだって楽園だ ザイル・パートナー 1 富士山詣で 2 クライミングという沼の先には暗い淵しか見えない 3 論点はそこではない 4 そこには、私たちだけの景色が広がっている 5 冷たく乾いた感触が伝わる 母がいた八ヶ岳 1 ハッピーセットの代償 2 家族を困らせない答えを出したかっただけ 3 父の出した条件 4 別れる寂しさに対抗するには、薄情にならざるを得ない 5 過去のなかにある本当のことは、ほかの人には決して見えない
著者
鈴木みき1972年、東京都生まれ、札幌市在住。山系イラストレーター。20代のカナダ旅行をきっかけに山に目覚める。以来、読者モデルとして山岳雑誌に寄稿するほか、山小屋でのアルバイト経験をもとに描いたコミックエッセイで山の魅力を伝えている。著書『悩んだときは山に行け!』(平凡社)など多数。本書が初めての小説作品となる。