自然災害からの復興のためのアウトドアギア「ベアボ ーンズ・リビング」
昨年夏、アメリカ・ユタ州で開催されたアウトドアリテーラーショーの後、車で1時間程度の距離にある広大な牧場に、赤津孝夫会長はA&Fのスタッフとともに向かった。その牧場主が、「ベアボーンズ・リビング(Barebones Living)」のオーナーでもあるロバート・ワークマンさん。A&Fでの取り扱いがスタートしたのは同年9月。新たにパートナーシップを結んで動き出す直前の訪問だった。
ロバートさんは、ベアボーンズ・リビングを立ち上げる前に中国で美術商をしていたこともあるという。その時代に培ったネットワークを駆使して、良質な中国の職人のもと多くのアイテムがつくられている。
牧場にはキャンプ場が併設され、シェルターのような巨大なテントが設営されていたという。そのテントを赤津会長が初めて目撃したのは、5~6年前のアウトドア・リテーラーショーだった。
「アメリカでは、オートキャンプ場などでもパーマネントに建てておくテントがあるじゃないですか。ベアボーンズのテントはそうした使われ方をしています。しかし、値段を聞いたら3,000ドルもする。日本のアウトドアでは難しいなと思ったんですけど、気になったんで話してみたんです。するとこのテントは、ハリケーンカトリーナとかハイチ地震のような被害の大きな自然災害で家をなくした人々に使ってもらいたいと思って、と言っていたんですね。仮設住宅がつくられるのはあまりに遅いし、つくられたとしても粗悪な場合もある。それを見て心を痛めた……復興にはまず『住』が必要という考えから、このテントをつくったということでした」
アウトドアでも冷たいビールを飲みたい。そんなシンプルな思いを実現してくれる便利なソフトクーラー。350㎖缶が6本入るコンパクトのものから96本も入るビッグなものまで、5タイプをラインナップしている。
テントのほかにもランタンやクーラーボックス、ダッチオーブン、ガーデニンググッズなどを少しずつアイテムを加えていったベアボーンズ。A&Fとロバートさんのビジネスの方針、そして製品への思いが合致し、国内販売がスタートした。
「日本で会っていろんな話をしました。そのなかで興味深かったのが、ロバートさん自身がコンゴでNPO活動をしていたということです。そんな経験から、復興にまず必要となるのは電気であるということ、次に必要となるのが、安心して眠れる場所ということでした。彼はそのことを現場から学んでいるんです。そうして、携帯用太陽光発電メーカーである“ゴールゼロ(GOAL ZERO)”を創立し、次に、野外での安眠を確保するベアボーンズの立ち上げにいたったそうです」
「ロバートさんの行動、その根源には『人道支援』という考えがある。支援が必要な人を助けるためには、やはり資金が必要ですよね。裕福な人に商品を買ってもらい、その利益を支援活動に使う。そのためには、すぐれたデザイン、機能を誇る製品をつくらなくては……ということを熱っぽく語っていました。目指すライフスタイルを自分たちの製品で提案していく。これから育っていくことを期待しているブランドです」
キャンプでのキッチングッズのほか、ガーデンシザースやシャベル&斧など、ガーデニング用品もベアボーンズの主力となっている。
ひとつひとつの道具にはロバートさんのアイデアが詰め込まれている。それらに共通するのは「道具としての機能」「風合い」「こだわり」を常に念頭に置いていること。
2012年にアメリカ・ユタ州で創業されたベアボーンズ・リビングは、生まれたばかりの若いブランドだ。ロバート・ワークマンの思いを共感し、未来を描いていくこと。それがモノを媒介にしたパートナーシップにつながっている。
(文=菊地 崇 写真=伊藤 郁、A&F)
*このページは、A kimama(www.a-kimama.com)にて、2018年に連載の「A&F ALL STORIES」を掲載しています。