旅で出会った 各国の伝統文化と最新技術を融合させた 変幻自在のバックパック「エスノテック」

 

ベトナム、インドネシア、インド、ガーナ、グアテマラ。刺しゅうや織り、バティックなど、スレッドに使われている柄は手仕事によって作られたもの。

「ある日、新婚旅行で世界一周をしているバックパッカーのふたりから、サポートしてもらえないかってメールが届いたんです。ふたりは『世界新聞』というウェブメディアで自分たちの旅の足跡を寄稿していました。それを読んでいたら、写真もうまいしおもしろそうなふたりだなと思ったんですね」

A&Fの赤津孝夫会長にメッセージを送ってきたのは、内山大地さん涼さんご夫妻。2015年6月にスタートさせた新婚旅行は昨年末まで、およそ900日におよぶロングトリップとなった。

「そこにはエスノテック(ETHNOTEK)のパターンを作っているところに行ってみたいというふたりの思いも書かれていました。私たちとしても、どんなところでどんな人がバティックや刺しゅうを作っているのかを知りたかったですから、実際に行ってくれるのならそんなありがたいことはない、と。ふたりをサポートすることを即決したんです」

そう語る赤津会長は、ふたりの旅のスタンスに、エスノテックを創業したジェイク・オラックの旅と近いものを感じたのだろう。
エスノテックのバッグは交換可能な「スレッド」と呼ばれるフロントパネルが特徴になっている。このスレッドのパターンには、インド、インドネシア、ベトナム、グアテマラ、ガーナなど、世界中の伝統的意匠を採用している。ジェイクが旅をするなかでそれらのパターンを作る職人と出会い、彼らの手仕事に光を当て、世に広めることで、大量生産の波から伝統文化を守る一翼を担ってきた。

 

 

エスノテックの手をモチーフにしたロゴには「手作りのものだ。これを残していきたい」という思いが込められているという。

「2012年、エスノテックはOR(アウトドアリーテイラーショー)でデビューしたとき、すでに大注目を集めているブランドでした。ジェイクと話してみたら、テクノロジーと組み合わせることでいろんな国の伝統的な手仕事を消えないものにしたい、というようなことを言っていたんです。こんな考え方は日本人のわれわれにはなじみ深いけれど、開拓のスピリットが継承されているアメリカでは少ないんですよね。アメリカ人でもこういう考え方をしている若い人間がいるのかと、それもおもしろいなと思いましたね。ジェイクはカメラバッグとして知られる『クランプラー』のデザイナーもしていたこともあってか、ファッション性だけでなく、旅するアイテムを創り上げるクオリティもある。新しいブランドを扱いたいという思いもあったので、契約をオファーしたんです」
 

左からガーナのスレッドをあしらった「プレムジパック」、コンパクトなスリングタイプの「シクロトラベルスリング」。こちらもガーナ。そして、グアテマラの「ラージャパック」。

アメリカ生まれのエスノテックをもっとも早く受け入れたのは、台湾と日本だったという。アウトドアにファッションを組み入れていくことに敏感だったのは、アメリカやヨーロッパではなく、台湾と日本だったのかもしれない。
台湾や日本から広がっていった要素のひとつにインスタグラムの存在もあった。バックパッカーがエスノテックを背負った写真をインスタグラムで投稿する。そんな人たちをジェイクは「トライブ」と呼んでいる。投稿にはハッシュタグでトライブと記され、世界に拡散されていった。内山夫妻も、まさにエスノテックとともに世界を旅したトライブだった。

「ジェイクはアイヌ工芸など日本の伝統文化にも興味があるようでした。だけど『日本は後回し。他の国は日本以上のスピードで文化が廃れていってしまっている。手作業が機械に変わっていって、文化の担い手である職人が少なくなっているから』と言うんです。世界各地の伝統を保護していくこと。これはアウトドアの根本にあることと繋がっていますから」

エスノテックとはエスノロジー(民俗学)とテクノロジー(先端技術)を融合させた言葉だという。このブランド名にこそ、ジェイクの思いが込められている。

(文=菊地 崇 写真=A&F)  

*このページは、A kimama(www.a-kimama.com)にて、2018年に連載の「A&F ALL STORIES」を掲載しています。

エスノテック

ETHNOTEK (エスノテック) は個性豊かな、世界各地の生地の織り手から直接買い付けた美しい生地と高機能で現代的なバックの出会いがもたらしたブランドです。「ETHNO=ETHNOLOGY 民俗学」と「TEK=TECHNOLOGY 技術」が融合した新しいコンセプトのバックブランドです。