熱い思いとユニークな発想から生まれたスーパーシェルター「ヘネシーハンモック」

熱い思いとユニークな発想から生まれたスーパーシェルター「ヘネシーハンモック」

テントとハンモックを融合したまったく新しいキャンピングハンモックブランド

風が吹けば背中を撫でていき、ゆりかごのような程よい揺れが眠りを誘う。自然と一体となって眠ることができるのもハンモックテントの醍醐味。写真はヘネシーハンモックの代表モデル「エクスペディションA-SYM ZIP」

「ORショーで会うとさ、ハンモックについてとにかく熱く語るんだよ。トムさんはいつでもハンモックのことを考えてるんだね」

A&Fの赤津孝夫会長は、ヘネシーハンモック(Hennessy Hammock)の創立者であるトム・ヘネシーについてそう語った。

トムは16才のときにアメリカ軍放出品のジャングルハンモックを持って、ワシントンD.C.からアパラチアン山脈までバイクトリップに出たのだが、それがすべてのきっかけだという。

通常、ハンモックに寝るとどうしても腰が折れ曲がってしまうのだが、ヘネシーハンモックのモデル名に添えられる「A-SYM」が意味するアシンメトリー、つまりハンモックの左右を非対称にし、頭と足先を長辺側に置いて身体を斜めにすることで、ほぼ真っ直ぐ寝ることができるようデザインされている。また、ボトムのスリットから出入りをするというユニークかつ特徴的なエントリー方法は、無駄な開口部がない分、蚊などの吸血昆虫の侵入を防ぎ、サイドジッパーがないため、軽量に仕上がっている。内部の天井にはリッジラインと呼ばれるコードがあり、小物を収納するメッシュポケットが吊り下がっている。リッジラインは内部を一定の長さに保持し、両端のコードにつながっているので、設営した際、つねに同じカーブを生み出す。ハンモックの各所に隠されたそうした意匠は、すべて特許を取得している。

天井にある細引きが"リッジライン"これがあることで常に同じカーブで設営でき、内部のクリアランスを保ってくれる。ヘッドランプなどを入れられるメッシュの小物入れも付いている。

「下からのエントリーはすごくユニークだけど、最初は落っこちゃうんじゃないかって怖かったよね。でもすごく理に適っていて、中に入って自重が掛かると自動的にきれいに閉まる。すばらしいアイデアだよね」

そんなヘネシーハンモックを取り扱うきっかけを聞いてみた。

「はじまりはウェインからだったんだよ」

最初に手にしたヘネシーハンモックは、赤津会長とは切っても切れない朋友であり、パックブランド「グレゴリー」のオーナーであるウェイン・グレゴリーがプレゼントしてくれたそうだ。

「ヘネシーハンモックはユニークでしょう。ウェインはそういうおもしろい道具が大好きだからヘネシーにもすぐ飛びついて、実際に使ってよかったから、すぐに持ってきてくれたんだ」

そうして2003年頃、A&Fでの取り扱いがスタートした。

会長をよく知るウェインは「Tak(赤津会長のアメリカでの愛称)はどんなものに興味があるんだ」ということで、ORショーでも一緒に見て回ることが多い。実際、それがきっかけで取り扱いの始まったブランドもいくつかあり、以前、扱っていたアルミ製ビッグダッチオーヴンの「ボルケーノ」、「キャンプシェフ」などがそれにあたる。

「アウトドアユニバーシティ(2000年初頭に2年ほど開催された、A&F主催の伝説的イベント)でさ、ウェインと一緒にヘネシーを張って寝たんだよ。その年は廻り目平で、しかも10月だったからとにかく寒くてさ……」

そう話し、懐かしそうに振り返る。

「ヘネシーはたしかにユニークだし、すごくいいアイテムなんだけど、値段が高かった。日本で売れるかと躊躇してたんだけど、静岡のお医者さんでヘネシーの熱狂的なファンがいて、自分で本国サイトを和訳して日本語のサイトを作っていたんだよ。こういう人がひとりいるならば、きっと受け入れられるはずだと思って仕入れ始めたんだ」

静岡のお医者さんとは、現在は横浜にある桜木町クリニックの院長である川崎一さんのこと。2000年初頭のULカルチャー黎明期、ULハイキング、ガレージブランドの情報をご自身のホームページで発信していた、草分け的存在だ。ポールを必要とせず、ペグも数本ですんでしまう軽量コンパクトなヘネシーハンモックは、本国ではもちろん、日本においてもULハイカーたちの目に留まった。

「ULハイカーだけでなくカヤッカーにも人気があったね。堀田さん(アウトドア作家の堀田貴之さん)とか伊東くん(旅する絵描きの伊東孝志さん)などが、すごく気に入ってくれたんだよ」

伊東さんは奄美出身ながら、ハブが大嫌い。下から出入りするヘネシーは蛇の侵入を防ぎ、そよ風に揺れながら眠るのが大のお気に入りで、手頃な木がない場所では、パドルや流木などを使い、当意即妙に使いこなす。本気でアウトドアをやっている人たちにとっては、自分のスキルと応用能力を試される最高の遊び道具なのだろう。

(上)タープを広げれば雨天時でも調理ができるほどの広さを確保できる。(下)お尻は地面に接地してしまうが、トレッキングポールや流木などを使ってでも設営が可能。

「最近はサイドジッパー付きにしたから、もっと楽にエントリーできるようになり、背の低い子どもも一緒に入れるようになった。前のモデルでもメッシュの位置を少しずらしてチェアにすることができたんだけど、やっぱり縫い目が怖かった。サイドジッパーモデルは本体にちゃんと座ることができるから、すごく安心だね」

近年、取り扱っている7モデルのうち、スタンダードモデルである「エクスペディションA-SYM」を含む4モデルにサイドジッパーが採用されている。また新しいモデルでは、メッシュを付けずより簡易的に使用できるリーフハンモックがある。

「トムさんはカナダに住んでるんだけど、冬の間はニュージーランドでデザイン開発をしてる。冬のカナダは日照時間が短いし、寒いから。でも最近ハワイに家を買ったらしいんだよ。常夏のハワイに住みはじめたらカナダに帰ってこないかもしれないね。でもつねにハンモックのことを考えてる人だから、そこでいいアイデアが浮かんで、またユニークなものを作ってくれるんじゃないかな」

【文=koichi ushida 写真=伊藤 郁、エイアンドエフ 】

*このページは、A kimama(www.a-kimama.com)にて、2018年に連載の「A&F ALL STORIES」を掲載しています。

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