いまこそ地球に必要なアイテムは? ステンレスボトルの先駆け「クリーンカンティーン」

いまこそ地球に必要なアイテムは? ステンレスボトルの先駆け「クリーンカンティーン」

世界中でいま注目されるステンレスボトルの先駆け

アメリカ・カリフォルニア州の北部にあるチコという人口8万人あまりの小さな町で、2004年に創業された「クリーンカンティーン(klean kanteen)」。チコにはカリフォルニア州立大学のチコ校があり、山や川などのフィールドに車で30分程度で行けるという立地もあって、「オーバーランドイクイップメント(overland EQUIPMENT)」などここを本拠にするブランドも多い。会社名とスペルはちがうものの、「カンティーン(canteen)」とは水筒のこと。きれいな水筒をつくりたいというシンプルな思いが、ブランド名にこめられている。

インスレートクラシックボトルとパイントカップ。MIYAKO ISLAND ROCK FESTIVALのオフィシャルカップ&ボトルにも採用され、フェスで出るゴミの削減に貢献した。

「ソルトレイクシティで開催されているアウトドアリテーラー(OR)ショーに彼らが出展していたのですが、見た瞬間に革新的でかわいいなと惹かれました。そして日本のみならず、世界中で売れると思いましたね。当時はアルミ製、プラスチック製が主流だったので、ステンレス製でちょっと重いのは欠点でしょうが、デザイン的にもいいし。A&Fでは水筒を扱っていないこともあって、ヒゲモジャのお兄ちゃんに声をかけたんです」

とは、A&F会長の赤津孝夫さん。
そしてヒゲモジャことジェフ・クレスウェルと話しているうちに、彼らの環境問題に対する深い思いに共感を覚えたという。ペットボトルやプラスチック製カップなどのゴミを少なくしたいという思いもブランド創世の礎になっている。そうして、ボトルをステンレス製にしたのは、環境ホルモンに対して警鐘を鳴らすためでもある。

クリーンカンティーンのロゴマークには、地球のデザインがあしらわれている。これも、ビジネスの力を環境問題の解決に役立てようと努力するB Corporationにも認定されているクリーンカンティーンならではの、姿勢の表われでもあろう。

1998年、デボラ・キャドバリーの『メス化する自然』(集英社)の和訳出版により、国内で話題となった環境ホルモン。アメリカでは「クリーンカンティーン」の発売後、2007年から2008年にかけて、BPA(ビスフェノールA)の危険性がマスコミで大きく報道されるようになったという。BPAはプラスチックの製造に使われる化学物質で、プラスチックボトルだけではなく、アルミ缶にも使用されていた。

「アルミは腐食してしまうので、内側を樹脂コーティングしているんです。そこにBPAが含まれていました。いまでこそ、BPAフリーという言葉はよく目にするんですけど、ボトルでその先駆けとなったのが同社です。そうそう“1% FOR THE PLANET”(売り上げの1%を環境保護活動に還元する非営利団体)に加盟したいということも、最初のころから話していましたね」

ステンレスはコーティングの必要がなく、安全な素材なのでBPAフリーのボトルとして、アメリカでは急激に人気を獲得。シルバーだけだったカラーバリエーションを増やしてゆき、保温・保冷対応の「インスレート」を生み出すなどラインナップの厚みも増していった。

「BPAフリーということでアメリカで注目を集め、プロダクトを増やすことで注目度を高めました。そしてさらにブレイクしたのが、他のショップや企業のロゴなどを入れるコラボレーションモデルの登場でした。アメリカでは『Apple』『Google』『Facebook』といったIT系からはじまり、もっとも反響が大きかったのは『Patagonia』だったと思います。ヨガスタジオにクリーンカンティーンを持っていくというのが、新しいスタイルとして定着したことも大きかったと思います」

カブーが名入れをしてコラボレーションしたパイントカップ。また、このカップを使用することでプラカップゼロに挑戦しているフェスなども、アメリカにはあるという。

「世界的な人気を誇るシンガー・ソングライターのジャック・ジョンソンも数年前からクリーンカンティーンをオフィシャルボトルにしています。いろんな風が時代によって吹くのですが、それにうまくフォローされたというんですかね。A&Fで扱っているブランドのなかでは、近年稀に見るほどの成長を遂げた会社のひとつです。本人たちはいたって愚直に、地球に対してどういうアイテムがいいのかということを考えているだけだと思うのですが。そうそう他のボトルに比べて、口が大きいのも特徴ですよね。これって、スムージーを入れるためだそう。既存のボトルの足りないポイントを全部組みこみ、ステップアップさせたのがクリーンカンティーンなんです」

発売当初のカップの底には、クリーンカンティーンからのメッセージが刻まれていた。「食べて飲んで、プラスチックにはご用心!」。

現在、クリーンカンティーンは1% FOR THE PLANETに加入しているだけではなく、環境、社会に配慮した事業活動を行なう会社が認証される「B Corporation」の一員でもある。冷たいドリンク用の「クラシックボトル」、保温・保冷効果の高い「インスレートボトル」、商品だけでなく、紙コップやプラカップの軽減をめざした「#Bring Your Own」という独自のキャンペーンも力を入れるなど、どのアイテムも「よりよい社会」や「地球環境保護」というコンセプトが貫かれている。使い捨てを少なくすること。このメッセージはいまも変わっていない。
ちなみにA&Fの本社には、ペットボトル用のゴミ箱は置かれていない。これはクリーンカンティーンのメッセージに呼応した、地球のための一歩でもある。
ゴミを減らすことを、日本でも具現化すること。
A&Fでは2017年に「スリーピークス八ヶ岳トレイル」や「MIYAKO ISLAND ROCK FESTIVAL」などに協賛し、クリーンカンティーンとともにメッセージを発し続けている。

 

(文=菊地 崇 写真=sumi⭐︎photo、編集部)

*このページは、A kimama(www.a-kimama.com)にて、2018年に連載の「A&F ALL STORIES」を掲載しています。 

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