色づく紅葉と初冠雪
トレイルランナー 上野朋子
この日の前日、「全国的に秋晴れが広がる模様」との予報が出た。
ここ最近は天候が不安定で、なかなか気持ちの良い青空が見られなかった。
そんな予報が出たら、ここぞとばかりに行きたいところがいくつか思い浮かぶ。
それぞれのフィールドの情報収集しながらも、「どこへ行こうか」最後まで迷う。
もうすぐ11月。雪の便りも、ちらほらと聞こえてきた。雪深くなる前のチャンス、今しか行けないところもある。そう思い、気候、装備、紅葉の見ごろなどを考えてこの日に訪れたのはこの場所だった。
浅間山は、火口とその周りの前掛山、その外に黒斑山、蛇骨岳、仙人岳と2200m前後の外輪山からなっている。今年の8月30日、それまでの噴火警戒レベル2から1に引き下げられ、立ち入り禁止区域となっていた前掛山までの入山が3年2か月ぶりに可能になった。
秋晴れ、そして2000m以上では紅葉も見ごろを迎えていることもあるという情報もあり、今回は外輪山から、前掛山までのラウンドをトレッキングスタイルで計画して出かけることにした。ちょうどこの前日、浅間山は初冠雪の便りが届いたこともあり、この時期ならではの景色を見ようと出かけた。
登山口の気温は2度。なかなかの冷え込みだった。
出発しても登山道は霜柱と山頂に近づくにつれて雪も見られ、凍結している個所も出てきた。冬が近づいてきたなと実感する。稜線に出ると、雪化粧をした浅間山が見えた。
麓はまだ、カラマツが黄葉している。この秋と冬の両方が楽しめるのが、1年のうちの今のわずかな期間だけだ。
いつもの縦走路を過ぎ、前掛山の分岐に来た。
この日は、晴天の予報が出ていることもあって、多くの人でにぎわっていた。
前掛山の登りは、ここまで縦走してきた稜線が対面に見える、美しい景色が広がっている。ここもまたカラマツの黄葉と、紅葉のコントラストがきれいだ。
前掛山山頂は、雪景色が広がっていた。歩くと足元はサクサクと音を立てている。
硫黄のにおい、まだわずかに出ている水蒸気を前にすると、やはりここは活火山のエリアなのだと肌で感じることができる。
そして、目の前に広がる山の大きさ、自然の壮大さに思わず立ち止まってしまうほどだ。
下山道は、また黄色く染まったカラマツ林を抜けて行った。湯の平の最後の登りを歩き振り返ると、浅間山の雪が解け始め、山肌を見せていた。南斜面は日当たりがよく、この時期の雪はまだすぐに解けてしまう。同じエリアに来ることがあっても、来るたびに自然の色は変化している。この日は、1日の中でも、朝に見た山とはまた違った山の姿に出会うことができた。
足元が安定して、のんびりと歩きながら、走りながら山を楽しめる期間もあとわずか。
短い秋の期間も楽しもう。