CRAZY CREEK クレイジークリーク

CRAZY CREEK (クレイジークリーク) は、Rob Hartにより1987年にモンタナ州ベアトゥースマウンテンの麓のレッドロッジからスタートしました。一見、何ともシンプルに見えますが1度使ってみると地球上の何処へ行く旅にも持っていきたくなるような携帯性と座り心地を秘めています。エイアンドエフはCRAZY CREEK (クレイジークリーク)の日本国内の正規輸入代理店です。 “DON'T JUST DO SOMETHING... SIT THERE!"

クレイジークリーク
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クレイジークリーク

CRAZY CREEK訪問記

悲劇を超えて

ビーチから、雪山まで オールシーズン、どんなシーンでも使える「寄りかかってくつろげる」オリジナルチェアは、 シンプルでありながら保温性・クッション性に優れた逸品だ。 多くのアウトドアマンから愛されるチェアは、どのような環境で生み出されたのか。 オリジンの魅力を見つけるため、モンタナ州南部の観光都市・レッドロッジに向かった。

CRAZY CREEK発祥の地

CRAZY CREEK(クレイジークリーク)は、1980年代後半にモンタナ州南部、カーボン郡のレッドロッジという、人口2000人ほどの小さな町で生まれた。カーボン郡は、豊富な石炭埋蔵量にちなんでその名が付けられた。その郡庁所在地が、レッドロッジだ。真裏のレッドロッジ・マウンテン・リゾートのランドマーク的存在であった赤いログハウスのロッジ、通称〈レッドロッジ〉がその名の由来だといわれている。現在のレッドロッジは、モンタナでも有数のアウトドア・タウンだ。東部にはフライフィシングの名川として名高いビッグホーン川を有するビッグホーンキャニオン国立レクリエーションエリアが広がり、レッドロッジと最古の国立公園であるイエローストーン国立公園の北東部エントランスとの間にはベアトゥース山脈が南北に走っている。ベアトゥース山脈は、モンタナ州とワイオミング州にまたがる3,818㎢の広大なウィルダネス区域内にあり、モンタナ州の最高峰グラニットピークを有するほか、カスター、ショーショーン、ギャラティンという3つの国有林から構成されている。裾野に広がる豊潤な森林生態系や、高山ツンドラ地帯のハイプラトゥ(台地)、万年雪を冠った標高3500メートル級のピークが20座ある峰々、それらの北斜面に残る氷河、その合間に点在する950以上ものアルパインレイク(高山湖)、そして何百マイルも伸びるトレイルはドラスティックに変化し、あらゆるアウトドア・アクティビティを楽しめる。無数に広がるフィールドは、アラスカ・ハワイを除くアメリカ48州の中で最も起伏に富む、ワイルドな地形だ。ベアトゥース山脈を東西に沿って這うように伸び、イエローストーン国立公園のゲートタウンであるクックシティとレッドロッジとをつないでいるのが、アメリカで最も美しい山岳景観道路と称賛され、2002年にナショナル・シーニックバイウェイ(美しい景観の道路による観光地化の取り組み)にも指定されたベアトゥース・ハイウェイ、別名ベアトゥース・オール・アメリカン・ロードだ。1936年の開通以来、何百万人もの観光客が訪れるこのルートは、AMA(全米モーターサイクリスト協会:American Motorcyclist Association)によって、全米ナンバー1のモーターサイクリング・ロードに選出されるなど、数多くのアメリカンを魅了し続けている。

CRAZY CREEKを訪ねて

   レッドロッジにあるCRAZY CREEKを訪ねるべく、ボーズマンから東に向かって車を走らせる。ロッキー山脈北部、イエローストーンリバー沿いに広がる牧場や農場地帯を抜け、インターステート・ハイウェイ(大陸横断高速道路)を約2時間下る。アブサロカ から ベアトゥース・ウィルダネスに至る区域の3000メートル級の山々を右手に見ながら、さらに1時間ほど南下すると、レッドロッジに到着する。イエローストーン国立公園やベアトゥース・ハイウェイ観光のゲートウェイ・タウンであり、古き良き西部開拓時代を思わせるチャーミングな町だ。ゆるゆるとレッドロッジの目抜き通りを走り抜けると、10分ほどでCRAZY CREEKの見慣れたロゴサインが見えてきた。その奥には、本社事務所が見える。フラットかつシンプルな建物で、かつてプロダクトをアメリカで生産していた頃は、社屋全体が工場であったことをうかがわせる。今でこそ海外に生産拠点が移ったことでひっそりとしているが、かつては町を代表するアウトドアメーカーとして、多くのローカルが働いていたのだろう。

 

ヒストリー

  サインもないドアをノックすると、社長のジョン・エルスベリー氏が迎えてくれた。奥さんのキムと一緒にキャンプ・トリップから戻ったばかりだというジョン。日に焼け、屈託のない笑顔で握手を求める。事務所に案内されて最初に目に入ったのは、1987─2000年代の新聞記事の切り抜きや、先代の様々な写真が貼られた壁だ。それらをつぶさに見ていると、ジョンがおもむろにCRAZY CREEKの歴史を語り始めた。「CRAZY CREEKは、1987年7月7日、ロブ・ハートによって創業されました。ロブとは、彼がCRAZY CREEKを創業する以前からの付き合いです。お互い、パウダースノーを目当てにこの界隈に移り住んできたスキーバムでした」スキーバムとは、スキーをするためだけに働く人を指す。「釣り馬鹿」ならぬ、「スキー馬鹿」といえば分かりやすいだろうか。カウボーイ・スキーヤーと呼ばれていたロブは、誰よりも速く滑りたがっていたという。「本当に冒険野郎でしたよ。スピード重視のロブは、コロラドアスペンの滑降レースに毎年のように出場し、誰よりも長いスキー板に一風変わったヘルメットを冠ることで、余計に目立っていました」レッドロッジの小さなカウボーイ・スキーヤー・コミュニティでは、ロブとジョンが知り合い、親友になるのに長い時間は必要なかった。「2人でルームシェアをして、パウダースキーばかりしていました。お互い、後に妻となる女性とダブルデートを楽しんだり、色々バカなことも一緒にやったりしました。あの頃も、今思えば古き良き時代の思い出ですね」

 

CRAZY CREEK創業のきっかけとなったチェア

CRAZY CREEKの最初のモデル〈オリジナルチェア〉は、カヌーやカヤックといったウォータースポーツが原点だと思われがちだが、実はウインターバックカントリー・キャンピングがそのデザインの原点だという。「アウトワードバウンド(アメリカのアウトドアスクール)のウインターコースのインストラクターをしていたロブは、スクールの生徒らを率いてコロラド州のロッキー山脈へ15日間のエクスペディション・ウインターバックカントリー・トリップに行きました。テントの外では、倒木や切り株など、湿って冷たいながらも腰をかけて休めるものがあります。しかし、テントの中で長時間座るための椅子はありませんでした。そこで、テントの中でも外でも、ドライで快適に座れるチェアを作ろうと考えたのです」そのベースとなったのは、ロブの祖父の手法だ。カヌーのシートのサイドにチェーンをクロスし、折りたたんで持ち運んでいたのだ。「ハイテク素材でアレンジし、軽量で持ち運びやすい座椅子ができないかとアイデアを巡らせていました。それを元に、いくつもの試作品を何ヵ月にもわたって作り続け、ついにオリジナルのチェアが生まれたのです」このシンプルな製品は、現在に至るまで革新的なポータブルチェアとして、世界中で愛されている。


最初の反応

CRAZY CREEKを興したロブだが、アウトドアマンでありビッグシンカー(大きな視野を持つ人)であったロブは、アイデアはあってもビジネスのスキルは持ち合わせていなかった。「ビジネススクールで学んでいた私は、あるパーティでロブとビジネスの話をしました。すると、翌週には私をビジネスパートナーとして迎え入れてくれたのです。創業からおよそ1年後のことです」最初のアウトドア・リテーラーショーが開催されたのは1989年。創業間もないアウトドア・ブランドが集まり、それぞれのアイテムを展示していたという。「ザ・ノース・フェイスやブラックダイヤモンドも出展していましたが、今とは比べものにならないくらい小規模で、ソルトパレスのボ
ールルームが埋まる程度でした」現在の展示会のように多種多様な製品群はなく、ほとんどがクライミング関連製品だったという。「ロブはクライミングコミュニティにたくさんの知り合いがいました。今でこそ、アウトドア・リテーラーショーでのクライミングコーナーは隅の方で小さく集まっていますが、当時はクライミング関連のブランドや小売専門店を通して、クライアントのコンタクト先を得ていました」CRAZY CREEKの人気に火が付いたのは、口コミのお陰だという。「ロブが得意のカリスマ性にあふれた話術で、展示会場に来た人たちをつかまえては製品を説明して回り、ブースに戻って来る頃には束になった発注書を手にしていたのです。それを私が集計して、生産ロットを調整していました。まさにロケットスタート的な成長を見せたのです」アウトドア・リテーラーショーは昨今、新製品の下見がメインで、発注は後日というスタイルが主流だが、当時は商品を見て、その場で発注していた。「ショーが終わる頃には、発注書の束がフォルダに入り切らないほど、溜まっていたことを今でも覚えています」最初の出展は大好評。創業当時は、ロブの自宅の地下室で、4台のミシンで数名の縫いこさんがプロダクトを作っていた。300個程度だった生産数が翌年に3,000個、翌々年には30,000個と、劇的な成長を遂げた。


海外生産へ、苦渋の決断

しかし、パテント(特許)を取得していなかったため、安価なコピー品が出回ってしまう。価格競争は不本意だったが、コピー品に対抗するために、中国への生産シフトを余儀なくされた。「ロブと私は、生産拠点を海外に移す決定をしました。アジアの縫製工場を視察し、1998年に本社での生産を完全に終了し、中国工場での生産を開始しました」当時、オペレーションマネージャーとして現場を仕切っていたジョンは人事も兼ねており、家族同然の付き合いをしていた職人たちを解雇する必要に迫られた。ブランド存続のためとはいえ、苦渋の選択だったことは創造に難くない。計らずも、その職人たちを救ったのはMYSTERY RANCH(ミステリーランチ)のデイナ・グリーソンだった。「海外生産に移行するにあたり、工場で働いてくれていた職人たちを、心を痛めながらも解雇せざるを得ませんでした。工場に残った裁断器具や縫製ミシンなども、売却する必要がありました。そのほとんどを買い取ったのは、近隣の町、ボーズマンで2000年にMYSTERYRANCHを創業することになるデイナ・グリーソンだったのです」デイナとロブの関係は深い。その縁は、80年代後半にロブがチェアのアイデアを思い付いた時に、デイナにサンプル作製の相談をしたことが始まりだという。「私は、ロブを通してデイナと知り合いました。デイナもかつてはクライマーで、根っからのスキーバムだったといいますから、二人は旧知の仲だったのかもしれませんね」当時、デイナはロブに縫製の手ほどきもしたという。「CRAZY CREEKのチェアは、サイドにウイングがあります。それは、正にデイナが今でも採用しているウイングのアイデアそのものなのです。デイナは、70年代半ばにボーズマンでKLETTERWERKS(クレッターワークス)を作り、80年代にはDANA DESIGN(デイナデザイン)パックを作っていました。縫製に関する知識と技術、アイデアを豊富に持っていたのです」CRAZY CREEKの海外生産が決まったタイミングで、デイナがDANADESIGNを手放し、新たなるブランドMYSTERY RANCHを立ち上げようと準備を進めていたというわけだ。これも、運命といえよう。


創業者・ロブの死


スムーズに海外生産へ移行した後、ジョンはCRAZY CREEKを去ることになる。当時、ロブとジョンとの関係は決して良好なものではなかったという。「ビジネス上の問題で、私たちの関係は些かぎくしゃくしていました。会社の変化に対して、オペレーションを仕切っていた私と創業者のロブとでは、意見の食い違いがあったのです」ビジネスを別にすれば、その後も良き友人であり続けた。しかし、不幸にもロブは自分の裏庭ともいえるレッドロッジスキー場の、しかも至極イージーなコースで、自分の身の丈ほどの小さな木に激突して死んでしまう。「ネパールやチベット、中国にまたがる世界最高峰のセブンサミットのうち4座を制し、世界中を股にかけて名だたる名峰を登り歩いた彼が、まさか1000回は滑ったであろう、ホームコースともいえるレッドロッジ・マウンテンで事故死してしまうとは……」事故当時、ジョンはレッドロッジ・マウンテンリゾートのCFOという立場にあり、現場の近くに居合わせていたという。「ロブの遺族との話し合いの末、私がCRAZY CREEKのビジネスを購入することになりました。これも運命なのでしょう」悲劇を経てジョンがCRAZY CREEKに戻って来た時、ジョンはロブがやりたがっていたこと、挑戦したかったことを、ロブが抱いていたビジョンでやっていく決意をした。「当時の私には理解し得なかったことを、もう一度腰を据えてやってみようと思ったのです。大きな壁に直面する度に、ロブだったらどうしただろうかと自分に問い、奮い立たせています」ジョン曰く、ロブには強烈なカリスマ性があったという。「アイデアを思い付いたらそれに集中し、実現するためにあらゆる努力を惜しみませんでした。準備や過程、リスクを緻密に考えたり、失敗を恐れたりするのではなく、ただひたすら、情熱をもって突き進むタイプでした。そうした時の彼パワーはすさまじく、周囲の誰もが彼に魅了されました」まさに、カリスマ。誰もが真似できるものではない。「ロブのカリスマ性が、CRAZY CREEK創業期のブランドを支える最大の原動力でした。彼は持ち前の前向きな性格で、物怖じせずにあらゆるカスタマーに声をかけ、自分のアイデアや商品について熱く語りました。世界の名だたる山々を踏破していたロブは、クライミングのコミュニティではそれなりに知られた人間で、危険や死に直面しても恐れない強さや大胆さも兼ね備えていました」人は一生の内に数回、自分の人生に影響を与える人物に出会うという。ジョンにとって、ロブがまさにそういう存在だったのだ。

悲劇を乗り越えて


中国における生産拠点は、長年にわたって信頼関係を構築していたが、ジョンは会社の経営者が変わっても、これまでと同様、親密な関係を継続できるか憂慮していたという。「10余年ぶりに中国の生産工場を訪問した時、私の心配事は杞憂だったことが分かり、深く安堵したことを今でも覚えています。90年代後半に工場で縫いこをしていた職人の何人かは、今でも同じ生産ラインで働いており、私のことを覚えていてくれたのです」創業者亡き今でも、強固なパートナーシップは、引き継がれていた。このことを、ジョンは何より誇りに思った。「私の部屋の壁には、世界中のお客様から届いた写真が飾ってあります。中でも、エベレストでガイドをしているロブの友人のシェルパの方は、ヒマラヤの頂でCRAZY CREEKのチェアを広げて撮影し、その写真を送ってくれたのです。私たちの製品がエベレストの山頂にある……大変感動しましたし、シェルパの方には大変感謝しております。過去に、私たちはある極地探検隊をスポンサードしたこともあります。世界一のピークや南極・北極といった局地でも、我々のチェアが使われているのです」CRAZY CREEKは、コピー商品の問題や創業者の死を乗り越え、成長を続けている。「私と妻のキム、そして残ったすべてのCRAZY CREEKのスタッフは、悲劇の後も彼の意志を引き継ぎ、創業以来続く、お客様に対する真摯な対応、顧客サービス、そして品質へのコミットメントといった会社の伝統を受け継いできました。しかし、我々は過去ばかりにすがり付いてはいません。今まで以上に未来を見つめ、お客様のアウトドア経験の一助となり得るような、楽しく、機能的な新製品開発に邁進していきます」自然豊かなレッドロッジは、アウトドアの製品を生み出すには最適の環境だ。これからも、ロブの意思を受け継いだ者たちが、アウトドアで快適に過ごせる最高のアイテムを続々と世に送り出してくれることだろう。

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